やな記憶が蘇ってしまった
ようやく読んだ。
- 作者: 山口貴由,南條範夫
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: コミック
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なんという牛股。あまりにも哀しい最期であった。力が強すぎたとは…
そして伊良子清玄。なんだかんだ言って最強だった。足の傷も自分でやったのだった。牛股が一矢報いたのかと思っていたのに。これだけ強いのだから負けてもしょうがない。あ、一話目の『無無明』はまったく台詞がなく、音のない世界だったけれどちゃんと話が通じてるところが凄い。目が見えない伊良子に似た体験を読者にもさせようということだろうか。漫画だから視覚は削れないので音を削ったと。サイレントにしても面白い映画がよい映画といったことはよく聞くけれど、この回はおもしろかった。
そして藤木源之助。あの手術。あれは、確かに気が狂うかもしれない。わたくしもガキの時分に腕をやってしまいまして、関節だったので普通にギプスで固定しただけでは治らんと言われまして(格好いい外科医の先生でございました。いつも両手をズボンのポケットにつっこんでサッサと歩く白衣の先生でした)、じゃぁどうしたのかと申しますと、牽引というものをやったのでございます。
牽引。文字通り引っ張るわけですが、やさしく外側から引っ張るのではありません。骨を直に引っ張るのでした。直に?どうやって?
折れた左肘に自転車のスポークのようなピンを刺し、そのピンの両端を紐でつなぎ、滑車を通して錘を吊るすのです。
うっ。画がヘタすぎ。ま、いい。これが痛い。折れたときよりずっと痛い。このピンをどうやって通すかというとドリルで通すのですよ。ピンの先端がネジになっていて、中学の技術の時間で使うような手回しのドリルでギリギリねじ込んでいくのです。注射で部分麻酔をかけているので、肉の部分は全然痛くないのです。血が流れてもあ、冷たいと思うくらいです。
が、先端が骨に到達した途端、地獄の苦しみが始まるのです。痛いのなんのって、もうね、痛いの。痛いの。痛いの。ギリギリ…ギリギリ…ギリギリ…とゆっくりゆっくりとしかやってくれないのです。なぜかというと神経を傷つけないように指先が痺れてないかどうか聞きながら進めるからなのですが、こちらとしては
痺れもくそもねぇッ!痛ぇよハゲッ!
というくらいの痛み。というかそんな余裕もありませんでした。痛すぎて泣きました。涙が止まらんとです。だーって流れる。純粋に痛みだけが原因で泣いたのは幼児の時以来だったのではないでしょうか。あれが最初で最後であって欲しい。
逃げられないのですよ、あの凄まじい痛みから。気を逸らす余裕などまったくない。隙がない。脳みそにグサグサグサグサッと刺さりつづける激しく鋭い痛み。これじゃ脳がもたないと一瞬思ったことを思い出しました。ほんと、なにかが直接脳ミソに刺さってくるような感じだったのです(ま、脳には痛覚がないらしいですが、イメージとしては最凶でしょ)。
おかげさまでネジをねじ込まれるとネジの進行方向とは逆方向に引っ張られる感じがするという、材木のキモチがよく判る男になってしまいました。
しかし、あれは見方をかえれば凄い拷問なわけで、それはもう、今でも思い出すとちびりそうなくらい恐ろしい拷問です。あれをもう一回やるぞ!と脅されたら、間違いなく、過去の数々の悪行から恥ずかしいあんなことやこんなことそんなことまで、あることないことなんでも吐いてしまいます。スパイでもなく、異端でもないただの厨房(極チビ)によくもあんなひどいことが出来たな!Dr.サカタ!(いや、感謝しておりますが。全身麻酔じゃだめってところが物凄く残念でした)
ということで、あの手術シーンは直視できませんでした。おそろしい。まったくおそろしい。