サムソンとデリラ 【Samson and Delilah】

当方にはさっぱりわけの分からぬところに大して鼻息もあらく興奮されている淑女を目にしたので、気になって調べていたら行き着きましたのがこちら(なぞなぞを出されるときー!となって必死に答えを探してしまいます。負けず嫌いです。ただし小一時間が限度です)。


サムソンとデリラ [DVD] FRT-061

サムソンとデリラ [DVD] FRT-061




多分中身はこれであっていますが、実際私が借りたのは、見るからに安っぽいパッケージといいこれまた見るからに安っぽいピクチャーレーベルといい、どうも著作権が切れた映画を手当たりしだい売っておりますといった風情のDVDでございました。そんなことはさておき。


これは酷い。なんというのか、数多ある聖書関係のお話の例に漏れずハチャメチャな展開。まさに期待通りの“酷さ”ございました。実は『ヘルレイザー』シリーズの4だとか5といった中途半端なところとどっちを見ようかと迷った挙句、そういや聖書のってなんとも言えぬオカシナ雰囲気があったなぁと思い出し借りた次第でして、その期待していたへんな雰囲気を味わうことが出来ました。なんだろうこの胸のもやもやは。


お話は…サムソンという怪力の男が暴れまわるというだけ?ん?兎に角めちゃくちゃな男で、こいつのお陰で話が回るという感じ。ということはこの前見たばかりの『ビッグ・リボウスキ』のピザと同じようなもので、そうと分かれば可愛らしいとさえ思えてきます。怪力を頼みに本当に自分の好き放題しているのかと思うと実に中途半端な感じで自分の村・民族・ユダヤ人のために支配者であるペリシテ人と闘うこともあるというところが実に人間くさくてある種の説得力はありました。ただ苛々とはするけど。面白いのはサムソンに憧れるユダヤ人の男の子が投石の名人らしくて、なにかというとペリシテ人に礫を撃ちつけようとしているところ。ま、ダビデ君と同じなわけですけども、ペリシテってパレスチナの由来らしいので、現在は立場が逆転しているのですね。インティファーダパレスチナの少年がイスラエルの兵士に向かって投石を仕掛けて実弾を喰らって死ぬと。


ま、それはそれとして。ヒロインであるデリラ(ディライラ)がめちゃくちゃ綺麗。サムソンが最初に惚れて結婚しようとしたデリラの姉セマダルはもっさりしていてどう見てもデリラの方がいいのに、しかもデリラから告白されているのにサムソンは執拗にセマダルを追いかける。ヘンだなぁと思っていたら、すぐに“あーそういうことだったのね!”という展開になっていて、そこにいたって初めてセマダルの中の人は可哀想だなと思いました。セマダルの中の人、どっかで見たことがあると思っていたらアンジェラ・ランズベリーで、その昔NHKでやっていた『ジェシカおばさんの事件簿』のジェシカさんだったのです。あのもっさりしたおめめは若い頃から変わっていなかったのでした。


一方デリラ役のヘディ・ラマー(Hedy Lamarr)は恐ろしく綺麗。ウイーン出身だって。19歳のときの『春の調べ』は必見だな。ところでアンジェラ・ランズベリーのほうが一回り12歳も年下なのに、姉役って酷いね。まぁ女優のキャリアとしてはジェシカおばさんのほうがずーっと上を行くことになったのでよかったんだけども。なんだか樹木希林のようだ。


ヘディ・ラマーのほかにもうひとりよかったのがペリシテの王様役をやったジョージ・サンダース(George Sanders)。これがなかなかカッコいい。ちょろっと口ひげを生やして斜に構えた物言いだけど多分いちばんまともだったひと。いい感じ。いかにも貴い身分にうんざりしているようで実はしっかり役目は果たしていますよという。


サムソンはただのアホ。いい意味で(って無理があるか)。ま、ああいうアホな英雄が居てもいいです別に。関係ないし。流石に目を焼かれて巨大な石臼を挽かされているところは可哀想だったけど仕方ない(俺ならデリラと一緒にエジプトに逃げるね)。げに恐ろしきはニョショウといふものなり。


サムソン役のヴィクター・マチュア(Victor Mature)、誰かに似ていると思ったら『ロッキー』のシルベスター・スタローンだった。
いや、内容からすると『ロッキー』というより『ランボー』だ。そうね、『サムソン怒りの神殿』みたいな。