ジャケット 【The Jacket】
これ見た。
- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
- 発売日: 2006/10/28
- メディア: DVD
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いやぁ。実は昨日から今日にかけて、0:00を挟んで見たんだけどもばっちりクリスマスの映画でしたね。いや、中身は微妙にホラーですけど。
この映画、多分今年見た中でベスト5に入りそうなくらいよかった。大蟻食さまもお好きなひょろひょろエイドリアン・ブロディが少年にアタマを撃たれてイラクから帰還した元兵士で、頭に受けた傷と心肺停止の所為で健忘症になっているという役。
これが帰還して回復、退院してすぐに警官殺しの濡れ衣を着せられるけども脳に障害がある湾岸戦争症候群とかなんとかという理由で無罪、しかし精神病院に措置入院させられる。ここの治療というのが拘束着=ジャケットで縛られた状態で遺体を安置しておく引き出し(モルグにある縦長のロッカーみたいなの)に閉じ込めるというもので、これがとても怖い。ものすごく恐ろしかった。閉じ込められるだけでもかなりクると思うんだけども手も足も動かせないというのが恐怖のマスタングに拍車をかけるというか殆どトドメ。個人的な性癖だけど。
で、主人公のジャック・スタークも恐怖で気が触れそうなほど怯える。単に健忘症なだけでキチガイではないにも拘らず、薬物注射+拘束暗いの狭いの怖いよぉおおおおおおおおお!によってホンモノのキチガイになりそうな勢い。こういう状況もさらに怖い。いかにもありそう。何を言っても病気扱いされてそのうち薬漬けにされて結果本当に朦朧としてまともな対応が出来なくなってそのまま延々と拘束。というのが怖い。
さらに。遺体入れの引き出しに閉じ込められているときに見る過去の記憶やなにやの映像の見せ方がいい。技術的には特筆するほどのモノじゃないのかもしれないけど、状況によく合っている。映像といえば、特殊な効果だけでなく、全体的に綺麗な画面が多い。少し暗めのくすんだ感じがいい(ジャン・ピエール・ジュネほどきつくない)。
さらに。声の低い、黒髪の陰鬱なキーラ・ナイトレイ(ジャッキー・プライス)が中々良い。いや、別に彼女の微乳・美乳がちらり見られるからいいというわけではありませんよ。なんかいい。
お話の重要な要素であるタイムスリップは中途半端な説明、例えばデンゼル・ワシントンの『デジャブ』のような似非科学的な説明がなく、とにかくこうなるの!という感じなので見ていて苛々しない。最初にホラーと書いたけどやっぱりこれはちょっとロリの入ったラブストーリーなのであって、このタイムスリップというかトリップと考え合わせると『エターナル・サンシャイン』と被っているようにも思える。この『ジャケット』のほうが1年後に作られているので、どこか意識しているのかもしれないけどわからん。
まぁ、最後なんでわかってるのにしゃべるんだよお前は!とか治療しろよお前!とか思うんだけど、つじつまを合わせるように好意的に解釈すると、自分がきちんと死ぬことでジャッキー=キーラ・ナイトレイのお母さんに信じさせようとしたんだなとか。
とはいえ、医者はどうかと。いくら精神科医とはいえ、いくら本人が望んだとはいえ、十分助かりそうな怪我なのに治療しろよ!と。まぁいいけど。瑕疵だ瑕疵。
少年の配役がいい効果を出してる。妙に。あ、金髪の007もちゃんとキチガイっぽくて結構よかったよ。
しかし。イラク戦争(湾岸戦争)は枕というかたいして意味がなさそうなんだけど、冒頭に暗視カメラの映像のなか、ヘリの機銃掃射で一瞬にしてミンチにされる人影は間違いなく本物(少なくともアメリカ軍の発表を信じるなら)であって、その扱いには微妙にひっかかりを感じたんだけど。
思わず続けて2回見た(まぁタイムスリップものなので入ったり来たりの時間と関係者の反応の整合性を見たいってのもあるが)くらいなので面白いですよこれ。大蟻食さんは是非見るように。
エンドクレジットの最後に掛かる曲『Quiet inside』がすごく。いい。どれくらいかというと。
【wicker park】『クラッシュ』の最後に掛かったStereophonicsの『Maybe tomorrow』や『50回目のファースト・キス』の最後に掛かったIsrael Kamakawiwo'oleの『Somewhere Over the Rainbow / What a Wonderful World』や『ボーン・アイデンティティ』の最後に掛かるMobyの『Extreme Ways』と並ぶ。くらい。