ほんとに冗談ですかGaucheさん

東京もあつかったんだろうか。


おもしろい感想を見つけたのでちょっと長いけれど引用しますと

しかし、『ミノタウロス』においてこの印象は一変する。あまりにもシャープで、余計なものをそぎ落とした文体は、じっくりと咀嚼してその風味を味わうというよりも、とにかく噛み潰し、ねじ伏せる欲求を喚起する。今日も質問の時に言ったことだが、物語内容がではなく、文体がハードボイルドそのものなのだ。

 そして、全てを味わい尽くした後、その極度に相貌の違う文体は、きっと相当策略的にコントロールされたものに違いないと考えたのだ。この物語を語るために極限までビルドアップした肉体、それが『ミノタウロス』の文体であると。

 ところが、佐藤氏の返答は全く想定外のものだった。おかげで、私はその瞬間二の句が継げなくなってしまった。

 氏は、この文体が単純に語り手に従属した結果のものにすぎないと言った。しかも、それがさも当然の振る舞いであるかのように。それは、ある意味では最も納得のいく回答には違いない。私が単なる読者であったなら。だが、書き手のはしくれとしては、そんな簡単にすませられない。



語り手=ヴァシリに従属した結果がアレということは、ヴァシリってやっぱりどこか病んだ人格というか。あと、ヴァシリはやっぱり死んでますね。場面転換の時の妙なブランクというかつながりのなさ、散漫な感じは、僕が想像する幽霊さんのおつむにぴったりきます。


会場でだれか、語り手は死んでないってさけんでも良かったのにな。


と。こちらも長いけれど貼っておくと

421 名前:Gauche 投稿日:2007/08/10(金) 21:07:08

やべえ、ぷりぷりざえもんをお持ち帰りしちまうとこだったぜ。

と、冗談はさておき

ジュンク堂のトーク・セッションに行ってきました。

仲俣氏は緊張を隠せない様子でしたが、結構頑張っていたと思います。

後で、掻い摘んで簡単なレポートをします。

うまく纏められない事やニュアンスを伝えきれない事は、

あやふやでざっくりとした書き方になります。

また、聞き違い、勘違いもあると思いますがご容赦ください。

そのうち、より正確なものが他の方から出てくるかと思います。

422 名前:Gauche 投稿日:2007/08/10(金) 21:24:14

『ミノタウロス』について

・書くのが10年早すぎたかもしれない。

 もう10年待ったらもっといろいろな史料が出てきただろう。

・ウクライナからの亡命者の回想録がカナダで多く出版されており参考になった。

・気候についてはネットのウェザー・サイトでほぼ1年に渡ってチェックした。

・農事暦をかなり丹念に調べた。

・飛行機については機種まで一応設定してある。

 連載時、門坂氏がその通りの挿絵を入れてくれた。

・飛行機の後部座席の機銃座について良い資料がないと思っていたら、

 なんと「紅の豚」の中で描かれていた。

・タチャンカってすげえだろ。

・架空の地名については時代と情勢を考慮している。写真にうつった道路標識なども参考にした。

・言語と訛りの扱いは難しい問題だった。

 トロツキーの自伝の記述を参考にし、地域・階級による差を考慮した。

・連載を始めた時点で既に半分以上原稿は出来あがっていた。

・『戦争の法』と関連付けて読むことは、あながち間違った読み方ではない。

・20世紀についての考察を試みた作品である。

・「死者」を語り手に設定したのは、20世紀を描く上でそれは外せないと考えたからである。

423 名前:吾輩は名無しである 投稿日:2007/08/10(金) 21:36:45

これだけ?

424 名前:Gauche 投稿日:2007/08/10(金) 21:37:35

他の諸々のことについて

・文学の停滞は日本だけのことではなく世界中で見られる現象である。

・アメリカの現代作家あるいはその作品は、社会性が高すぎる。

・イギリスの文学は過去のものはもちろん現在でも評価すべきものが多い。

ゼイディー・スミスはすごい。次作の邦訳が出ないとは何たることだ。

・笙野頼子はその言語感覚、構成力においてもう別格である。

・村上春樹の存在が日本の文学に与えた影響は大きい。小説の言葉を変えてしまった。

大蟻食様の妹君は熱烈な村上春樹ファンで、彼の悪口を書いたら許さないとのこと。

『アンダーグラウンド』の功績は路線による格差を浮き彫りにしたことである

・阿部和重の作品は興味を持って読んでいる。

・三島由紀夫は作品を量産しすぎた。その質にはかなりむらがある。

・1789年を境に世界はどのように変わったか。

・戦争のあり方はどう変わってきたか。

・メッテルニヒが為した仕事の意義と、その効果が続いている間の技術革新が

 後の世に齎した影響について。

・日本文学の大部分を高く評価しないのは何故か。

・現代の日本やアメリカを舞台にした作品を書かない理由。

・史料・資料の存在とそのアクセスについて。

・戦争について、あるいは戦時を背景にして作品を書くことについて。

宮崎駿「千と千尋の神隠し」の湯屋のシステムのすごさについて。

425 名前:Gauche 投稿日:2007/08/10(金) 21:40:07

大蟻食様の今後について

・次はいよいよ『メッテルニヒ氏の仕事』に取り掛る。

あと7作品書くつもりである。

・そのうち3作品については既に構想を持っている。

・ひとつは2.26に関するもので、エレンブルグ風になることを想定している。

来年中に文藝春秋から短篇集を出版する予定である。

 長期に渡って書いてきたものなので、一冊に纏めるのに手を入れる必要がありそうである。

426 名前:Gauche 投稿日:2007/08/10(金) 21:57:38

愛するダーリンについて

・佐藤哲也にとって小説を書くことは苦行のようだ。

・「何故こんなきついことをしなければならないのか」と本気で言っている。

・机に向かった後はまっすぐ歩けないほど消耗している。

427 名前:吾輩は名無しである[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 22:04:26

>・日本文学の大部分を高く評価しないのは何故か。

>・現代の日本やアメリカを舞台にした作品を書かない理由。

この辺りが聞きたい。なんて答えだった?

428 名前:吾輩は名無しである[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 22:13:13

現代日本ではないけど、日本の近代小説は狭苦しい感じがするのと、資料が手に入りにくいことがあるそうです。

ヨーロッパなら公文書館に行けばアクセスできるけど、日本だとお寺に頼み込まないといけないとか。

429 名前:428[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 22:17:24

>・書くのが10年早すぎたかもしれない。

> もう10年待ったらもっといろいろな史料が出てきただろう。

ウクライナは現在建国の最中で、正史を立ち上げているところだから。歴史の暗い部分を掘り出す作業は歓迎されないだろう、ということですね。

>・気候についてはネットのウェザー・サイトでほぼ1年に渡ってチェックした。

20世紀初頭は現在より寒かったはずなので、ミノタウロスはそこまで計算に入れて書いた。

>・「死者」を語り手に設定したのは、20世紀を描く上でそれは外せないと考えたからである。

それも、名誉な死に方をした人ではなく、しょうもない死に方をした人。


430 名前:吾輩は名無しである[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 22:24:56

語り手死者かよ!

でも20世紀の死者だったら

もっともっとしょうもない死に方をした人で書くべきじゃないの

あれでもまだ上等すぎるだろう

431 名前:吾輩は名無しである[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 22:25:51

さて亜紀がエレンブルグに肉薄できるかどうか。

432 名前:Gauche[] 投稿日:2007/08/10(金) 22:29:38

うまく纏められないし、ニュアンスも伝えきれないので、

そういう書き方にしたんだ。勘弁してくれ。

感謝。

王朝文学については源氏物語の牛車のエピソードをあげて、

そのどうしようもない愚かしさが嫌いだと仰せでした。

また貧困層への視線の欠如、意識の低さについても指摘されていました。

日本を舞台にすると読み手がサボるとも仰せでした。



強調(bold)は引用者。


ちょ、ほんと長いな。


兎も角、ヴァシリ死んでンじゃんとか、あと7作かよ!とか。


にしても、大蟻食氏にも怖いものがあったというのに驚いた。妹だよ妹。あんなもの、気に入らないことを一言でも言おうものならひっぱたいておけばいいのだよ、うははははは。と行きたいのだが、妹ね。末っ子となると、見た目や能力、性格など無関係に、家族の間では最強の地位に納まっている場合が多いからな。けっ!あね・いもうと のドロドロのメロドラマ小説とか書いたりしないんだろうな大蟻食さんは。


と。2ちゃんねるは面白いなぁ。同じ“吾輩は名無しである”さんでも21:36:45のつっこみは間が悪く、要らないけど、22:24:56のはナイスつっこみである。あれでもまだ上等というのもなかなか良いし。この後にも日本の古典のお話がちょろっと出てるんだけど面白い。


で、あと7作品説であるが、“愛するダーリン”(って本人が言ったのか!?)の大蟻食観察によると、

残念ながらこの大蟻食は常に大蟻食をやっているわけではなくて、時には鰐だったり大蜥蜴だったりするのです。…(中略)…問題は鰐が頭の悪い低温動物だということです。待っているうちに自分が物陰に潜んで獲物を待っているということを忘れてしまって、迂回に失敗した当の獲物に踏んづけられて怒り出すなどということも決して珍しくはありません。



ということであるから、2007年8月9日に都内某所であと7作品とか言っていたとしても、なに、直ぐに忘れて15作品くらい書かれるであろう。だから心配しなくて大丈夫ですよぷりたん。


とはいえ。3から4年に1作品というペースであるとすれば、7作品書くには21から28年かかることになる。とすると、世間一般のリタイアと変わらないということになるので、あまり責める気にはなれない。ただし。いくら集中しているといっても1日3時間労働という話だし(あ、コーヒーと葉巻が原因か)、生まれ持った類稀なる身体能力・持久力を有しているという事実を考え合わせるとやはりあと15くらいは書けるのではなかろうか。15×4=60、60+40=100!…ん、やっぱり行ける。まぁ僕などはイワンの馬鹿よろしくとっくに死んでいるだろうけど。


なに、哲也さんの愛があれば大丈夫。ん。