晴れ

暑い。


飲まれなかったけれどやはり一日中寝ていた。夕方になってようやく起き上がる。ちょっとお出かけ。ビデオを借りる。なにを借りたのかはひみつ。


帰りにラーメンを食う。葱多め。背脂でギトギトなんだけれど、口当たりは結構サラサラ。とても美味しいけれど、これはこれでヤバイんだろうな。血はドロドロに。


支払いの段になって財布が殆ど空になっていることに気付く。ラーメン(正確にはギョーザ定食)分くらいは払えた。だがしかし。一体どういうことか一瞬分からなかったが、さっきビデオを借りたときに5千円札を出しておきながらおつりは小銭しか貰ってなかったことを思い出す。とって引き返し、レジにそのことを告げると、少々お待ちください、直ぐに調べてまいりますとのこと。

待っている間にも次々と客が来るので、落ち着かない。忙しいところどうやって調べるんだろうか、と気にしつつ待っていると、ひょっとして俺が樋口さんだと思ったのは実は野口の野郎ではなかったか?などというよからぬ映像が目蓋の裏に浮かび、一端そうなってしまうと、あ、まてよ、昨日夜に飲んだときに憧れの樋口さんとはさようならしたのではなかったか?いや、それより朝コンビニでサンドイッチなるものを購入したときに泣く泣く別れたのではなかったか?というこれまた哀しくも恐ろしい光景がわが灰色の脳細胞によみがえって来る。

などという妄想をCDレンズクリーナーやら24枚ものCDを傷つけることなくやさしく収納してくれるケースといった、レンタルビデオ屋にはつきもののコーナーの前でもじもじしながら育んでいると、やせっぽちの眼鏡店長が電卓片手にこちらへやってきた。

よく見ると手には電卓のほかに野口の野郎が4人握られていた。それを見てようやく落ち着きを取り戻したわたしは、4人の野口を確認済みであるにもかかわらずやや殊勝な趣で「あ、やはりわたしの記憶はあっていましたか?」などと白々しく確認した。

すると向こうは、いい間合いで平身低頭「はい、そうです」と返すものであるから、僕も調子に乗って「あ、数字でちゃんとでましたか?とりあえず僕に合わせてるんじゃないんですか?」とこれまたいいタイミングで内容とは裏腹に腰の低い雰囲気で返してみた。すると眼鏡店長は「処理したレジでちょうど4000円プラスが出ましたので間違いありません」といい実際に担当だった女の子と声をそろえて「申し訳ありませんでした」と頭を下げたので僕も胸をなでおろした。

よかった。ヘンな酔っ払い(正確には二日酔い)クレーマーにならなくて。だってあそこが一番便利なお店だしな。

今日ほど貧乏でよかったと思ったことはない。だってね。これがお金持ちだったならば樋口さんの一人や二人消えちまっても気付かないでしょ。一人消えただけで空っぽになるような財布だったからこそ気がついたのだ。よかった(違

帰り着いてベランダを見るとシクラメンがこの猛暑のなか枯れもせずに頑張っている。おまえ偉いな。おれはもうだめだ。さらば。