これはすごいなんかすごい

映画館で観ようと思ってたけどスルー(確かミニシアター系だった)していたのをビデオ屋さんで偶々見かけたので借りた。『ホテルルワンダ』もそばにあったけれど、気力・体力に自信がなかったのでやめた。

ライフ・イズ・ミラクル [DVD]

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見始めたときには疲れ果てていたので、いつもどおりのエミール・クストリッツァ的ドタバタのシーンで一回落ちた。寝てしまいました。結構五月蝿い音楽なのに何故か寝てしまった。『アンダーグラウンド』のサントラ掛けながら寝てしまうこともよくあるので、あのスラーブな曲になにかあるのかもしれない。


それにしても、熊のような市長の熊狩りだとか息子の出場しているサッカーの試合(おかんのオペラはともかく、おしっこの意味がわからん。まったく)だとか、徴兵される前の宴会なんかはどれもやりすぎじゃねーの?と思うんだけども、見終わってみると何故かそれなりに意味があったような気がしてくるので不思議。これは監督の腕というよりは編集の腕なんじゃないかと思う。あと、場面ごとの音楽のつけ方もそうとう上手い。出血しているサバーハ(おぱーいさいこー!)を橇に乗せて運んでいる場面で、ひょっとして死んだ?という瞬間に流れる歌というか叫び(押井守の『攻殻機動隊』思い出した)なんて、鳥肌たった。


で、全体を通したお話としてはなんというか構成よくないんじゃないのか?と思ったり、そもそも監督考えてないんじゃない?と思うんだけど、やっぱり全部見終わってから思い出すとあのシーンなかったらなにか足りないよなぁと思う。なんというか感覚だけで撮ってるとは思わないけど、やっぱりセンスのようなものがドンとあるんでしょう監督のなかに。ルカとサバーハがベッドに乗って飛んでいくなんてどう考えても理性的に書かれた脚本とは思えない。でもちゃんとあれでいいのだ(いつもよりお金掛かってる気がした)。


で、戦争のシーンがあるのだけども、ダラダラした戦争(ロケット弾は必ず後ろへ発射される)の様子を見ていてふと『戦争の法』の雰囲気がわかったような気がした。違うか。


この映画、ところどころ、というか頻繁にうわっと驚くようなハッとするような綺麗というかなんというかそういう画面になる。例えばムスリムが攻め込んできたとき、暗闇の中を非難していく住民。山道。駆け上がる馬。この場面は一瞬だったけど強烈に印象付けられた。あと、パンクズよろしく脱ぎ捨てられた服を拾いながらルカを追いかけていくザバーハと山里の風景なんかも異常に綺麗だった。

そういやクストリッツァの映画って動物がものすごく沢山出てくるな。今回だって準主役のロバ(さいこー!)をはじめ、いきなり落っこちる鳩、その鳩に飛び掛る猫、さらにその猫に飛び掛る犬。ガチョウ、ガチョウを食う鷲、人食い熊、そして馬。と、一杯出てくる。ベッドの上で喧嘩する猫と犬のシーンなんて、よくあんなの撮れたなと思う。監督の中では動物と出てくる濃すぎる人は同じレベルなんだろうか。


で、一体全体どうだったかと言うと。泣けた(やべぇ)。いや、泣けるかどうかとかどうでもいいんですけど。問題なのはなんで涙がでたのか分からんというとこ。なんか。こう。濃い人たちのドタバタと派手な音楽と怒涛の怒涛に振り回されて疲れて、ついぽろり。かもしらん。見たことも聞いたこともない役者ばかりというのも効いてるのかもしれない。ハリウッド製の映画を見るときよりも素直に見ている気がする。


とはいえ、見ている最中に、ルカがどことなくハリソンフォードだなとか、市長を殺したあと密輸してたワルいやつ(死んだ)は明らかにリュック・ベッソンだなとか思いました。