とっさ

駅。跨線橋からホームへ降りてきて、手袋を外しiPodナノを弄っていたとき。


トントンと肩を叩かれ、ちょっと、手袋落ちましたよと上品(そう)なおばさんに教えて頂いた。


その瞬間僕は手袋を拾い上げ、そのおばさんを見ると既に身体を半分翻したところ。僕はあわてて言った「すみません」


どう考えてもここは「ありがとうございました」と言うべきところなのに「すみません」だと。あほあほあほ俺のあほとか思ったけど、実際すでにその場を離れかかっている人に向かって「ありがとうございました」は長すぎる。かといって「おおきに」と言えるほど昔の人間でもなし。


これが相手が上品そうな人ではなかったならば、「どうも!」で済ますんだけど、それは許されない雰囲気だった(「ありがとう」も同じ)。というかまともな大人相手に「どうも」とは言えん。まあ、まともな大人といってもどうせ見た目だけのことで、中身は勘違い大人もどきが殆どなんだけどな。つーか見た目だけでもまともぽく見せる技術を見に付けたのが大人か。


「おおきに」だと、目上相手に使っても悪くはないけど、丁寧に言おうとすると「おおきに、ありがとうございました」と、そもそも「おおきに」の存在理由というか意味が不明じゃなかろうかというへんてこな使い方になるので時間の無い今これが選択されることはない。


となるとやはり「すみません」となるんだな、なぜか。むりやり意味を採ってみると、これは「お忙しいところ私なんぞの、しかも手袋ごときのためにわざわざ指摘くださってどうもありがとうございます」…ん?違うな。逆だな。


「どうもこの度は、貴方のようなどう見ても親切で、ちょっとしたことでも見てみぬ振りの出来ぬご婦人の前で手袋なぞ落としてしまい、お手間を取らせてしまいましたこと、誠に申し訳ございません」ということか。なんだこりゃ。


つーか「とっさ」ってなに?ということで調べると

とっさ 0 【▼咄▼嗟】

〔「咄」は舌打ちをしてしかること、「嗟」は嘆息の意〕きわめて短い時間。

goo辞書




へぇ。舌打ちと嘆息か。しらなんだ。