大蟻食の【アーザル・ナフィーシー 『テヘランでロリータを読む』を読む。】を読む。

まったく、つまらない日常を送っているとネタがねぇな!といったとき、いつも毒液でネバネバの蜘蛛の糸を地獄の底から垂らしてくださるのはありがたいまったく。

基本的に真面目な本は嫌いではなく、書評にもちょうどいいかと思って読んだのだが、これ、全く推薦できない。今月の書評済みリストを見たら誰かがやった後だったので、本当に助かった。



つうことはアレですか。基本、書評と言うものは推薦したい本について為されるものということですか。まぁ、それはそれとして、その誰かってのは推薦してるってことになり、即ち読めてねぇなその誰かってことになりませんか。とか思いつつネットヘドロを漂うとあるわあるわ大手がザクザク。並べてみましょう。
まずわ読売新聞。

何十年も前に外国で書かれた小説に、イランの現実が鮮やかに投影されていく。頽廃(たいはい)的とされるアメリカの小説に描かれた夢や欲望が、イラン人の夢や欲望と重なり合う。著者がとりあげる作品の「いま、ここ」と、イランでそれを読む人の現在が触れあい、読者を内側から突き動かしていく様子に、文学が持つ力を感じた。



おおっと、いきなり来ましたね。片や最低の文学趣味、片や文学が持つ力ですか。おおっと?“評・松永美穂早稲田大学教授)”だって。この方は早稲田大学の先生じゃぁないですかふはー


お次は朝日新聞。こっちもお得意のチカラ系でしょうか。

著者は言う。「小説は寓意(ぐうい)ではありません。それはもう一つの世界の官能的な体験なのです。……彼らの運命に巻き込まれなければ、感情移入はできません。感情移入こそが小説の本質なのです。小説を読むということは、その体験を深く吸い込むことです。さあ息を吸って」

 感情移入とは、なんと懐かしい言葉だろう。そしてこれはなんと普遍的に響く言い方だろう。もしかしたら、わたしたちがなくしかけているのも、この素朴な行為、あらゆるものへの感情移入なのかもしれない。



だはー!感情移入キター!感情移入…か・ん・じょ・う・い・にゅ・う…あまりにも普遍的で素朴なために見落としていました。嗚呼、難しく考えすぎていたところにこれ。小説の本質を教えられたわたくしは目からウロコが落ちました。っとぉ!こちらは“[評者]小池昌代(詩人)”でしたか。なるほど、心を打つコトバのチカラはシンプルさにあるのですね。僕ももっともっと単純な人間を目指そう。


とお次は、産経新聞ですね。書評とかやってたんですね、驚きました。

500ページ近いが、一気に読んでしまった。ノンフィクションとしてもおもしろいし、イランの素顔と苦悩がまざまざと見えてくるからだ。アメリカでベストセラーになったこともよく分かる。



これが一番素直な読み方なんじゃないかという気がしますな。「おそらく、一緒にナボコフやオースティンなどを読んだ学生は著者以上だったにちがいない。」という一文の意味が分からなかったけれど。まあいいや。“歌人 小高賢”だもんね。歌は難しいものだと昔から決まっている。行間を読むなど僕にはできない。それも単純になろうと決意を新たにした直後のわたくしには。


最期は、おお、三大紙と呼ばれたのはいつのことだったのか、産経にも抜かれてしまった毎日新聞

「小説は寓意ではありません」と著者は教壇から学生たちに向かって呼びかける。「それはもうひとつの世界の官能的な体験なのです。その世界に入りこまなければ、登場人物とともに固唾[かたず]をのんで、彼らの運命に巻きこまれなければ、感情移入はできません。感情移入こそが小説の本質なのです。小説を読むということは、その体験を深く吸いこむことです。さあ息を吸って」


 わたしはこの『テヘランでロリータを読む』を、まるで小説を読むように読んだ。著者をはじめとする、イランに生きる女性たちの悲痛な運命に巻きこまれ、それを固唾をのんで見守った。小説を愛するすべての人におすすめしたい、近来の名著だ。



おお?同じところが引用されているな。“感情移入とさぁ息を吸って”ってあたりが小説好きを転がして止まないキーセンテンスなのね。おお、しかも最後には近来の名著だとまでいわっしゃる。ふーん、そこまで仰る貴方はだ・あ・れ? ん? ・・・こ、こ、こ、この方は!


若島正・評”


…しかも御近影付き。


と。今日はいじわるに並べてみましたが楽しんで頂けたでしょうか?わたくしは件の本を読んだことがありませんのでなんとも申し上げられません。読む気もありません。というか大蟻食先生の文章で読む気が失せました。というかもともとなかったんですけど、正確に言うと読む気が起こる可能性が非常に小さくなりました(実質消えました)。


論争なら読んで見たい。往復書簡(だは!)が公開されたら読みます。本も読みます。い・じょ・う!