寒い。暗い。怖い。

なにも無かったのでなにも書くことがありません。はい。
なのでこの前電車に乗ったときのことを書きます。はい。
電車に乗ったら、前に座った女性が凄い人でした。はい。
かばんからミスドの景品らしき黄色い手鏡とハサミのようなものを取り出し睫毛を挟んだのです。はい。
睫毛をカールさせる器具のようでしたが、離れていた所為か慎重なる手つきでその文明の利器を駆使した成果は定かではありませんでした。はい。
彼女は次にペンのようなものを取り出し、いま巻き上げたばかりの睫毛に黒いものを、こう、下から上へと塗り上げていったのです。はい。
彼女は次にまたぞろペンのようなものを取り出し、いま塗り上げた睫毛の直ぐ上の部分に、左のまぶたは右から左へ、右のまぶたは左から右へ、つまりは中央から外側へと黒いものを塗り始めたのです。はい。
彼女は次にまたまたペンのようなものを取り出し、今度はその情熱的な分厚い唇に紫っぽいものを塗り始めたのです。はい。
そのとき唇は、んぐぐ…ぷるんっ、んぐぐ…ぷるん。といった具合に揺れていました。はい。
化粧が終わると同時に私たちを乗せた電車は彼女の目的地であった丹波橋に着いたのでした。はい。
彼女はなにごとも無かったかのように颯爽と降りました。はい。

僕は、